2010年10月27日

これはミステリーでなく純文学

高村 薫の照柿

推理小説は期待しちゃダメ。
・・・高村薫さんって、こんな感じだったっけ?

重厚だけれどテンポの良い、五條瑛さんやとにかく一切修飾語のない
吉村修一とか読んでいたせいか、す、す、進みませんページががが!

この上巻でも、「工場が衛生的でなく暑く、苛酷な労働条件です」
ということを表現するのに何十ページと使ってある。
うーん、確かに主人公の幼なじみとして、しかも極道という過去を捨てて
これだけの苛酷な場所でずっと働いていた・・という虚無感や焦りを表現するのに
必要なのかもしれないが・・

昔、世界名作全集で、延々と家族構成の説明だけを読まされた、
某・有名な名作を思い出す。

コンサルのレポートは一枚いくら、だとか何時間でいくら、だとか、
完全に量で金額が決まる分野もあることは知っているが、
もしかして小説も?長ければ長いほどありがたがられるの?と、
少しやさぐれてきたのも本当だ。

熱くて暑い描写がえんえんと続くので、読んでいるのは真冬なのだけど、
なんだか息苦しくなってきた。
顔をぐいぐい、夏のむわっとした熱いコンクリートにでも押し付けられているようだ。
読んでいるのが冬で、逆によかった。。
でも、そろそろ、展開急いで!正直しんどいです、読むの。

この上巻を説明して、と、誰かに言われたら、あたしは迷わずこう言う。

「主人公の刑事が偶然電車事故に巻き込まれて、
事故の被害者を愛人にしていたオトコの奥さんに一目惚れして
偏執狂的にストーカー紛いのことをおっぱじめる。
たまたまその奥さんと浮気しているのが、劣悪な工場で働いている
芸術家の男で、逃避行しようとしていたらばったり刑事と遭遇。
そうしたらこの二人はたまたま幼なじみだったらしい。
んで今、お互い奥さんを間に挟んで勝手に相手を陥れたくて
モウソウシテルところ。そこに刑事が追っている事件がちらほら、
間に入ってきてる感じ」・・以上!

肉感的人間ドラマ+サスペンス
合田刑事シリーズ第2弾!!「マークスの山」よりもずっと、合田刑事の内面に踏み込んだ、人間ドラマの意味合いが強い作品になっていると思う。ホステス殺しを追う合田刑事が偶然居合わせた列車轢死事故。そこで出会った佐野美保子に対する執着。幼なじみの野田達夫との再開。実は達夫は美保子と不倫の関係だった。警察内部と被疑者の両方の問題から、なかなか決着の付かない捜査。圧倒的なリアリティを持つ高村節は本作でも健在でした。達夫が勤める工場の炎に似た、エンジ色の「照柿」という色が執拗と言えるほどに描写され、登場人物達の心理状態の細かな描写と相俟って、作品の世界を、確かな質感と匂いの迫り来るリアルさを醸し出しています。佐野美保子への想いに揺れる合田刑事とか。他の高村作品が好きな方、人間味溢れる刑事小説が好きな方、オススメです。

これはミステリーでなく純文学
野田達夫は自分は人殺しではないかという脅迫観念を
心の中に飼い、しばし噴出しそうになる怒りを微妙な
バランスで自制しながら、工場勤めを続けてたが、
18年ぶりの合田雄一郎との再会が彼の人生を狂わる。
ラストに達夫が起こした殺人事件のきっかけとも言える子供時代の
二人の出来事が明かされます。逃れられない運命をいつもながらの
格調高い表現で淡々と描写する筆力に脱帽。
余談ですが、作者が女性って始めて知ったときはびっくりしました。
照柿(上)

カーゴパンツ


ラベル:高村 薫
posted by なつみ at 20:54| 読書 | 更新情報をチェックする
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